日本の地方都市は公共交通機関が発達していて、食べ物が美味しく、買い物にも便利だ。中でも街の中心部に近く、観光客に知られていない裏通りや繁華街に近い古くからの旧市街は面白い。
そんな想いを抱えながら、2015年の年末に上海から帰国した私は地方の空き家を外国人向けの宿泊施設にしようと九州中の都市をリサーチしていた。
そんな中2017年の年末、ついに長崎で条件に合いそうな一つの物件をみつけた。
そこは車も入れない。最寄りの駅から80mの高低差がある山の中腹にある築70年を超えた木造家屋だ。空き家になって長く、全体的にくたびれてはいたがどこか惹かれるものがあった。階段状の坂道が続くものの最寄りの駅までは徒歩で10分。繁華街にも15分で行ける。
それに眺望が最高だ。何より物件価格が安かったのが手元資金に余裕のない私には助かった。
アクセスは悪い。でもこの場所には駅前や繁華街にはないリアルな長崎の暮らしがそこにあると思った。その後、半年ほどかけて自力で改修し、2018年の秋に宿泊施設としてオープンした。
これが日本文化に興味のある欧米人に刺さった。
翌2019年には規模の拡大を目指して条件に合いそうな物件を探した。そんな中、崇福寺駅からもほど近い木造長屋群の地主さんとの出会いで2軒目を開く事ができ、この場所での開発に腰を据えて展開することを決めた。そしてこれら一連の開発を「長崎坂宿」と名付けたのが2019年の年末だった。
アクセスの悪い斜面地も見方を変えたら、眺望も良く、車が入ってこない開発の抑制された静かな環境がある。何より長崎の坂にはなんとも言えない風情を感じる。
周りには似たような空き家が沢山ある。上手くいくなら、客室を増やしていこう。利用者が増えれば飲食店や物販店を開くこともできる。
客室が増えれば、スタッフも必要になる。住み込みのスタッフのために家を用意しなければならない。スタッフが増えれば、食事や日用品を買う場所だって必要になる。
コンビニやキヨスクのようなお店があれば、坂の上で陸の孤島化している地域住民も喜ぶ。あくまでホテル客やスタッフの為の施設だが、地域の人も利用できるようにすればいい。
飲食店も欲しい。ただ坂の上にいきなり作っても客はこない。まずは出張料理人や出前ベースで食事できるスペースから始める。ウーバーイーツで地元のレストランから食事を配達してもらう。スタッフが皿に綺麗に盛り付ける。
客の好みを聞いて、オススメの地元の美味しい料理を提供する。別にホテル内でシェフを囲い込む必要もない。和食、中華、フレンチ、イタリアン、卓袱料理、なんだって提供できる。
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長崎坂宿は眼鏡橋など長崎の観光地にも近い、坂の上の木造長屋を1軒1軒ホテルや店舗に改修しています。
坂のある町は面白いよ。