
”一瞬でたどり着く時間旅行
あらゆるものがゆったりと
まあるく時に俊敏に
空間を浮遊する
陽は音色と共に沈み
体に染み入る静けさ
そして本物の暗闇
深い深い眠りに差す
水玉の煌めく光
小さき者の大きな声
浮世離れした現実に
この世の真の律動を知る
私が令和の東京にいると
誰が信じられるだろうか”
東馬場家は、武蔵御嶽神社に仕える神職一家として、400年以上にわたりその在り方を守り、日本の歴史と文化を今に伝えています。
武田信玄の四天王から続く名家の系譜
東馬場家は、戦国時代の名将・武田信玄の重臣であり、「武田四天王」のひとりとして知られる馬場美濃守信春(ばばみののかみのぶはる)の末裔と伝えられています。
山頂に鎮座し「天空の神社」と謳われる武蔵御嶽神社の信仰と伝統を支える御師(おし)・調師(ととのし)を世襲する神職一家として、また日本の歴史と文化の一端を今に伝える貴重な存在として、その家系は歴史の流れの中で絶えることなく受け継がれ400年以上続いています。
現在は御師・調師ともに14代目夫婦と15代目夫婦で務め、小さな3人の16代目候補たちも健やかに成長を続けています。
有形文化財に宿る時を超えた歴史と価値
東京都御岳山の標高816メートルに佇む東馬場の建物は、慶応2年(1866年)6月16日に竣工しました。この建物は、奇跡的に江戸時代の姿をそのまま留め、建築史上貴重な歴史的建造物として、「馬場家御師住宅」の名で東京都の有形文化財に登録されています。
門をくぐると、まるで時空を超えた旅が始まるかのように瞬く間に江戸末期の世界へと誘われます。古色を帯びた梁や柱は積み重ねた時代の重みを物語り、踏みしめる床板の軋みは当時の息遣いを今に伝える――ここに漂う空気は、遠くから響く神社の太鼓の音や、木立を抜ける風のざわめきと共鳴し、日常の喧騒を消し去り心を浄化するかのような静謐な魅力にあふれています。
家族の絆と歴史が息づく宿坊
この建物は、東馬場家の10代目当主が、愛する妻が寂しさを感じないよう、彼女の実家と同じ間取りで建てたと伝えられています。その思いが、厳かな建物に温もりを添え、家族の絆を物語っています。現在も東馬場家の子孫が暮らしながら、宿坊として参拝者を温かく迎え入れています。
内部には、書院造りを思わせる格式高い部屋や内神殿といった厳かな造りがある一方で、囲炉裏の煙の跡やガラスのない窓、古い落書きなど、何世紀も前の人々の暮らしの名残がそのまま残されています。現代的な便利さから離れたこの伝統的な建物は、江戸時代の工夫と知恵を見事に体現しており、東馬場での滞在は、日本の伝統的な建築美を味わうだけでなく、歴史に深く根ざした家族の日常生活に触れる貴重な体験となるでしょう。
神域と旅人をつなぐ場所
宿坊とは、神社や寺に併設された宿泊施設で、もともとは参拝者や僧侶が身を寄せるための場所でした。時代とともに旅人も迎えるようになり、日本の文化や精神性に触れる滞在の場として受け継がれてきました。
東馬場では、武蔵御嶽神社に代々仕えてきた東馬場家がこの御師住宅を守りながら旅人を迎えています。信仰と文化、そして長い歴史の中で育まれてきた真に息づく暮らしに触れるひとときをお届けしています。
歴史と自然が織りなす特別な魅力
御岳山に鎮座する武蔵御嶽神社の宿坊は、深い歴史と豊かな自然に包まれた特別な場所です。ここでは、日本古来の文化や伝統に触れるとともに、山の静寂や澄んだ空気の中で心を癒やし、精神を調えるひとときを過ごすことができます。
参拝者にとっては祈りを捧げる神聖な場であり、旅人にとっては歴史と自然に寄り添う滞在の場。その独自の魅力は、時代を越えて多くの人々を惹きつけ続けています。
神様と人をつなぐ架け橋
御師(おし)は、神様と人をつなぐ「仲執持(なかとりもち)」の神職です。参拝者の願いや思いを神様へと届ける大切な務めを担っています。厄払い、七五三、結婚式、地鎮祭など、さまざまな神事で奏上される祝詞は、神様とのつながりを深め、参拝者の心にそっと寄り添う祈りの言葉でもあります。
時代を超えて続く配札
御師(おし)は、神社に仕える神職(神主)として、参拝者へのご祈祷をはじめ、地域の案内や宿泊の世話など、多岐にわたる役割を担っています。かつては各地を巡り、御札を配りながら神社への信仰を広める、いわば宣教師のような役目も果たしていました。
この伝統は今も受け継がれており、特に秋から春にかけては山を下り、講社(地域ごとに結ばれた神社信仰の人々の集まり)を一軒一軒訪ねて御札を直接手渡しています。時代とともに形を変えながらも続いてきたその姿は、信仰の絆を絶やさず受け継いできた証でもあります。
信仰と生活が交差する特別な場所
御岳山には、東馬場を含め約20軒の宿坊が点在しており、住民の約3分の1が御師という、他に類を見ない地域です。山上にありながら今も人々が暮らし続けており、信仰と生活が密接に結びついた独自の文化が息づいています。この環境は、訪れる人々に日本の伝統と地域のつながりの深さを伝えています。
御師が奏でる雅楽
御師たちはまた、伝統芸能を受け継ぎ、神事に彩りを添えています。東馬場では、14代目が龍笛、15代目が篳篥を奏で、その音色が神聖な空間をさらに引き立てます。これらの演奏は、御師としての枠を超え、古来から続く文化の継承者としての使命を体現しているのです。
舞継がれる太々神楽
武蔵御嶽神社で舞われる太々神楽は、江戸時代から続く伝統で、東京都の無形民俗文化財にも登録されています。東馬場の御師たちは、道開きの神・猿田彦命の役を主に務め、その舞は力強さと神秘に満ちています。儀式の場に深い敬意と神聖さをもたらすこの舞は、御岳山の信仰と文化の象徴であり、多くの人々に感動を与え続けています。
ここにしかない肩書きの誕生
調師(ととのし)という肩書きは、ここ東馬場で生まれた独自の呼び名です。
東馬場家では、以前から「女将」や「若女将」と呼ばれることに、どこか違和感を覚えていました。そうした呼び名では、自分たちが大切にしている思いや在り方を十分に表すことができないと感じていたからです。
そこで、ご滞在の時間により深く関わり、心身を調和へと導く役割を表す言葉として、「調師」という肩書きが生まれました。
心身を調和に導く存在
調師は、薬草の知識や自然の力、そして心を込めた手料理とおもてなしを通して、訪れる人々の心身を「ちょうどいい」状態へと調える存在です。
完璧を求めるのではなく、楽器を調律するように、その人にとって心地よい調和へと導くことを大切にしています。
ご滞在中は、その時々の状態に合わせて、今のご自身に合った過ごし方や体験をご案内いたします。
未来へと磨かれていく役割
「調師」は、単にご滞在を支えるだけの存在ではありません。訪れる人々が日常の流れから一歩離れ、自分自身の感覚を取り戻す時間に寄り添う役割を担っています。
東馬場では、これまで宿坊の営みの中で大切にしてきた志に「調師」という名を与えました。その本質を受け継ぎながら、変わりゆく時代に合わせて柔軟にその在り方を磨き、それぞれにとっての“ちょうどよさ”と静かに向き合うための拠り所であり続けたいと考えています。
神域を歩く、御岳山の森
御岳山には、古くから神域として守られてきた森が広がっています。苔むした岩や、幾百年の時を刻んだ古木が静かに佇み、水のせせらぎとともに深い静寂を湛えています。
春の新緑、夏の深い緑、秋の紅葉、冬の澄んだ空気——四季の移ろいとともに、森はさまざまな表情を見せてくれます。
東京都とは思えないほど豊かな自然の中を歩いていると、日常の喧騒は遠のき、まるで時の流れの外側にいるかのような静けさに包まれていきます。
雨の日だけの幻想的な魅力
霧が立ち込める雨の日の御岳山は、まるで異世界に迷い込んだかのような神秘的な雰囲気に包まれます。木々や岩にまとわりつく水滴がほのかにきらめき、静寂の中に響く雨音が心を静かに落ち着かせてくれます。
雨の日は、晴れた日とはまったく異なる幻想的な景色に出会える、少し特別で、どこか幸運な一日。霧に包まれた森は、訪れた人だけに静かな美しさを見せてくれます。
山に息づく命の気配
御岳山には、今も多くの野生動物が静かに暮らしています。歩いていると、凛とした佇まいで姿を見せる天然記念物のカモシカや、夜の闇を滑空するムササビに出会うこともあります。
人の気配に気づくと、彼らはすぐに木々の奥へと姿を消してしまいますが、その一瞬の出会いは、この山に今も多くの命が息づいていることを感じさせてくれます。
思いがけない命の気配に触れる瞬間は、この場所が豊かな自然に包まれていることを、そっと教えてくれます。
星と街の灯りが出会う夜
夜になると、見晴らしの良い場所から満天の星空と、東京から鎌倉まで続く街の灯りを一望することができます。頭上には静かな星の光が瞬き、足元には遠く都会の灯りがきらめきます。
満天の星空と大都市の夜景を同時に望める場所は、東京ではほとんどありません。この光景は、昼間の山とはまた異なる表情を見せ、御岳山ならではの特別な夜を感じさせてくれます。
山の麓に広がるエメラルドの水辺
御岳山の麓には、澄んだ水で知られる白丸湖や、多摩川上流の美しい自然が広がっています。湖や川の水は透き通ったエメラルドグリーンに輝き、都会にいることを忘れてしまうような静かな水辺の風景が広がります。
ラフティングやカヌー、サップなど、多摩川ならではのリバーアクティビティも楽しむことができ、山の静けさとはまた異なる自然の魅力に出会うことができます。

お車でお越しの方
・中央道の場合・
①八王子ICから御岳登山鉄道ケーブルカー「滝本駅」まで約60分
②御岳登山鉄道ケーブルカー「滝本駅」から「御岳山駅」まで約6分
③「御岳山駅」から御師集落方面へ徒歩約10分
・圏央道の場合・
①日の出ICから御岳登山鉄道ケーブルカー「滝本駅」まで約40分
②御岳登山鉄道ケーブルカー「滝本駅」から「御岳山駅」まで約6分
③「御岳山駅」から御師集落方面へ徒歩約10分
電車でお越しの方
①JR青梅線「御嶽駅」で下車
②西東京バス「御岳駅」から「ケーブル下駅」へ約10分
③御岳登山鉄道ケーブルカー「滝本駅」から「御岳山駅」まで約6分
④「御岳山駅」から御師集落方面へ徒歩約10分
「ケーブル下駅」からはケーブルカーに乗らずに1時間の登山でのアクセスも可能です。