沖縄南部の百名(ひゃくな)という集落のはずれに、muiという宿をつくりました。
muiとは無為自然という言葉からきています。「作為なく自ずと然る」という意味で、水が硬いものにあたると形を変えて包みこむように、生まれたばかりの赤ちゃんの泣き声のように、自ずと湧き起こる思考や行動に身を任せられるような場所にしたいというコンセプトです。
ここには高級ホテルや旅館のようなサービスや設備はありません。あくまでうつわとしての宿に、この素晴らしい地域の素材をつかって、訪れた方々それぞれの心地よい過ごし方で盛り付けていただけるように。そんな日々変わるmuiの色をわたしたちは楽しみにしています。
ときとして、普通、あたりまえなどの固定化された価値感やものさしは小さな感動や気づきを見逃してしまうことがあります。muiの建築は外と中、自然と人工物、宿と住居、暮らしと旅、専有と共有など、それぞれが緩やかに繋がるつくりになっています。快適性や利便性にとらわれず、明確な線引を曖昧にすることで心を動かされるような一瞬があるような気がしています。
もし、ほんの一瞬でも意識を奪われてしまうようなワンシーンがあれば、きっと誰かの記憶に残る場所になるのではないか。そんなことを考えながら、できるだけ”ホテル”というものさしをはずして、建築家(studio cochi architectsの五十嵐さん)と楽しみながらつくりあげました。
muiが目的地になることはそれほど望んではいませんが、muiがきっかけでこの素晴らしい地域を好きになっていただけたら、こんなに嬉しいことはありません。
muiから海を眺めることはできませんが、少し歩くと集落の先には手つかずのありのままの海があります。
muiの周辺には愛すべき素敵な場所がたくさんあります。それは地域の方も大切にしている宝物のような場所です。
百名の受水走水(ウキンジュハインジュ)は、沖縄の稲作発祥の地と呼ばれており、今も大切に守られています。湧き水が豊富なこの地域は以前は稲作が盛んでした。隣の仲村渠(なかんだかり)という集落では、今でも地域で取れた稲の藁を編んだ綱を使った「綱引き」の行事が受け継がれています。
オプションで、レンタル電動アシスト自転車をご用意しております。土地の香り、流れる風を感じて、自転車に身を預けながら、自由気ままにどこまでも。
muiにはわたしたちが沖縄で出会ったシェアしたい価値があります。それらは何かと何かを比べるような価値観ではなく、自然と紹介したくなる心を奪われたもの。
沖縄でシェアしたい”好き”をぜひ一度試してみてください。
muiにはたくさんの草木を植えました。いずれは森に囲まれるようになってほしいと思っています。ただ自然があるところにはどうしても多様な生き物たちが集ってきます。鳥のさえずりやカエルの鳴き声などは心地よいかもしれませんが、ヤールー(ヤモリ)やクモなどの虫も沖縄の自然の中では多く見られる生き物です。苦手な方がいらっしゃいましたら遠慮なく声をかけてください。少しだけおおらかな心で見守っていただけると幸いです。