有機農家が暮らしを営む、一日一組限定の農家民宿(Farm Inn)
私たちの住居も兼ねた小さな庵(iori)であり、宿そのものに人の暮らしが営まれ、季節の移ろいで変化していく、生きた宿。
宿泊という体験を通して " 暮らしそのもの " を提供しており、一般的な民宿、旅館、一棟貸しの宿とは異なり、まさに、" 暮らしの中に泊まる " ことが目的となっています。
長野県佐久市望月町は、北に浅間山(あさまやま)、南に蓼科山(たてしなやま)と、山々に囲まれた海抜約800メートルの高原地帯です。
ことほぐ庵は町の中心から少し離れた、遠くの山々を見渡せる小高い場所にあります。
冬は-10℃以下まで冷え込みますが、夏の夜はとても涼しく、温暖で湿潤な日本では珍しいパリッとした空気が身を包みます。
気候的には西洋に似ているようで、周りにはりんごの果樹園が広がっており、季節の移り変わりを五感で楽しむことができます。
宿の前には田園風景と山々が広がります。
四季折々で表情を変える、里山の素朴で豊かな日常です。
自然の理のなかで生きるということ
そんな自然豊かな里山で、日々畑仕事で多種多様の果菜と穀物を育て、季節の移ろいに身を任せる日々を過ごしています。
それはまさに晴耕雨読。
晴れれば畑に出て、天気が悪ければお家で休む。
自然は時に理不尽で、農業をやっているとそれは嫌というほど経験します。
でもたくさんの恵みと豊かさを与えてくれる、慈愛に満ちた存在でもあるんです。
だからこそ私たちは、自然、そして宇宙の理に従いながら、逆らうのではなく流れるように日々を紡ぎます。
種を蒔き、苗を植え、収穫し、食べる。そしてまた繰り返す。
私たちにとっては何てことはない当たり前の日常ですが、便利が加速していく現代では " 非日常 " となっていくようです。
" 自産自消 " を体現するサステナブルな宿の形
宿の敷地周りには畑が広がっており、年間を通して150種以上の野菜や果物を化学肥料・化学農薬を一切使用せずに育てています。
その他にも、米、小麦、蕎麦、小豆、大豆など、調味料やお菓子にも必要な作物を育て、味噌、醤油、麹などの発酵調味料を自家製の素材だけで作ります。
庭や畑では名古屋コーチンを放し飼いしており、毎日産みたての卵を自給することができています。
これだけの自給力を兼ねたお宿は他にないのでは、と自負しています。
一般的な旅館やホテルでは、食材を地産地消で調達することが多いと思いますが、ことほぐ庵ではさらに一歩進み、食材を " 自産自消 " する新しいサステナブルな宿の形に挑戦しています。
その時、その季節で、本当の旬と呼べる食材を、その都度農園で収穫する。
野菜にとって最も良い鮮度でお客様にご提供することができます。
また、飲食業界で問題となる「フードロス」ですが、ことほぐ庵にフードロスはほとんどありません。
野菜は畑で必要な分だけ収穫し、余った野菜クズなどは、畑の土と混ぜ込み堆肥にすることで、新しく作る野菜の栄養になります。
そうしてまた野菜を収穫・・・といったように、全く無駄がありません。
畑の土に常在する分解者たちが、ただの野菜クズを土の栄養素に変えてくれるんです。
そのため、収穫した野菜も食味の良いものを選りすぐり、その他は畑に戻しておくことで、無駄なゴミを出さずに質の良い野菜を味わうことができます。
畑があることで私たちの生活から「フードロス」という言葉は無くなりました。
畑の維持は楽ではありませんが、私はこの生活観から" 豊かさ " を得ました。
便利が加速的に進み、生活から畑がなくなり、人が鍬を持たなくなった現代。
今世界中で目指しているサステナブルな世界というのは、実はもっと人間の暮らしの根源的なところにあるように感じます。
宿として目指すもの
ことほぐ庵は、ゆっくり休まるお宿に加えて、" 心から楽しめるお宿 " を目指しています。
高級感があって施設もお部屋も豪華な旅館やホテルに比べ、宿自体は素朴です。
そのかわり、濃密で楽しい時間を過ごしていただけるよう、お客様一人ひとりとのコミュニケーションを大事にし、私たちの " 農的な日常 " をお伝えしています。
鶏の産みたて卵を採ったり、鶏の餌やり、百姓仕事なんかを一緒に行いながら、会話に花が咲くなんてこともよくあります。
そのため、「なるべく人と会わず、お部屋でゆっくりしていたい」という方には少し不向きかもしれません。
もちろんお客様のプライベート空間は確保しております。
また、周りを囲む広い敷地と畑、そして目の前に広がる田園風景は、開放感と自然の心地よさを十分に感じていただけるでしょう。
一日一組限定ですので、他のお客様と顔を合わせることなく、安心してお泊りいただけます。
わざわざ遠くからご足労いただくご宿泊です。
皆様の楽しい思い出になればと願って、スタッフ一同心よりお待ちしております。