香林 ―― さまざまな漢詩で詠われている中国・紹興の美景地区の名であり、異宗教と異民俗が融合した理想郷的な意味を持つ。
金沢においてこの言葉を冠する土地の名は、比叡山延暦寺の僧「香林坊」に由来します。かつて織田信長の手によって滅亡した朝倉氏に仕えていた香林坊は、後に還俗し、加賀の薬種商に婿入りします。そしてある晩、義父の夢に現れた地蔵尊のお告げを受けて目薬を調合。その目薬が前田利家の目の病を治したことをきっかけに名をあげたと云われています。
そんな歴史的背景を有するこの地にて、九谷焼をはじめ、古くから世界の工芸品を扱うギャラリー『眞美堂』のビルを改装。
兼六園から21世紀美術館に到るまで、時代を超越して美の集積地となったこの街に、東洋世界における美の在り方を見つめ、その処方を試みる滞在型空間『香林居(こうりんきょ)』が生まれました。
土地に充満する空気が凝縮されて文化となり、洗練された美へと滴下していく姿を。
異世界や異文化が融和し、新たな美と平穏が創出されていく様を。金沢の歴史・文化・自然が滲み出した、重厚で豊かな時間の流れを。
みなさまに心ゆくまで感じていただける、そんな滞在になりますことを切に祈っております。