1986年、オーベルジュ清里は、日本で初めてのオーベルジュとしてオープンした。
「八ヶ岳の自然の恵みを味わってほしい」
自家農園で有機無農薬で育てた野菜のおいしさ、山や森で採集してきた山菜や茸、ジビエの滋味を引き出し、フレンチ料理に仕立てあげ、ご提供しよう。これが原点である。
このとき、山梨県の北西端に位置し、東京から車で2時間かかる清里で、この土地の魅力をじっくりと味わってもらうには、やはり宿泊は欠かせなかった。
また、八ヶ岳連峰と南アルプス連峰、奥秩父連山の峡に位置するこのエリアでは、名水が数多く点在するため、ワイン、日本酒、ビール、ウイスキー、焼酎と多彩な銘酒が醸されている。
この土地の食材を、この土地のお酒とともに味わってほしい、その思いの具現がオーベルジュというスタイルの選択だった。
それから約40年が過ぎた2022年、オーベルジュ清里は新しくなった。
そのひとつがヴィラであり、ひとつが薪火レストランである。
「八ヶ岳の自然の恵みを五感すべてで味わってほしい」
味覚だけでは物足りない。清里の空気の温度や湿度、野鳥の囀りや木々の葉擦れの音、獣の声、花や草の薫り、陽光や青葉、夕焼け、星空……このすべてを届けたい。
新しいヴィラは、リビングが外のデッキに設えられている。室内ではなく、より自然の傍で過ごしていただきたいから。
焚き火スペースも備える。炎とともに過ごす時空間が、八ヶ岳の恵みをいちばんダイレクトに味わっていただけるから。
そして、同じスペースに新設された薪火レストランでは、シェフが自らこの土地で伐り、割り、乾かした薪の炎で、この土地の素材を調理する。炭火とは違い、個性の強い薪の炎。薪の樹種や乾き具合を知っていることと、炎を操る技術とが相俟って絶妙な味を生む。
変わらずに変わりつづけるオーベルジュ清里の在り方。
ヴィラに泊まり、薪火料理を味わう。
この土地を五感すべてで味わうための時空間。